文/安藤麻矢 – 東西FXリサーチチーム
欧州での移民問題はユーロ為替市場に不安感を与えていた。ついには6月29日に開かれたEU首脳会議では10時間以上にも及ぶ議論にまで熱気が帯びた。移民問題の解決策を為替リスクと捉え、一時ユーロの売りが進むと見られたが、欧州連合のドナルド・トゥスク大統領(欧州理事会常任議長) が移民問題で合意に達したと明らかにしたことで、ユーロ買いの勢いが強まった。29日午前の東京外国為替市場ではユーロが対主要通貨で急伸、EUR/USでは正午で1ユーロ=1.1646~47ドルで、レポートによると前日28日の17時時点に比べて0.0087ドルのユーロ高・ドル安になっている。ユーロは対ドルで1カ月ぶりの大幅高となり投資家のリスクオンが見られた。
イタリア、スペインやギリシャなどを含む地中海に面した国々へは経済的貧窮から逃げ出してくるアフリカ人や内戦から逃れてくるシリアなどからの移民および難民組が後を絶たない。そして難民を一時的にでも収容することによって国費がかさむ受け入れ国。人権が確立されて歴史が長い欧州だが、実際、 (GDP)国内総生産の低い国にとっての経済負担は大きい。 IMF(国際通貨)基金の発表によると、2015年に多数の難民が押し寄せたギリシャの昨年度のGDPは 2,000億米ドルで世界第53位、スペインは1兆3,135億ドルで第14位、イタリアは1兆9,378億ドルで世界第7位となっている。
一方、2015年の難民危機時に100万人の移民を先導し、今回欧州連合(EU)全体で移民に関する新たな協定の必要性を述べていたメルケル首相率いるドイツはというと、アメリカ、中国、日本 に続くGDP大国で3兆6,848億ドルでの世界第4位である。
ドイツの半分に近いGDPのイタリアは、地中海を渡り到着しやすい立地であることから難民の到着が集中し負担が増していることから不満を持ち、オーストリアと共に今回の移民対策への合意にどのくらい協力するかはまだ明らかにされていない。
一方近隣国のイタリアからからドイツへ移民が流れ込むことを危惧した移民受け入れ反対派内部分裂寸前にまで発展していることから、イタリアの協力体制の不透明性は両国間の衝突リスクとし依然存在し、もし関係がこじれば、イタリアの債券市場は脆弱になるであろうと、ハンブルグを拠点とする銀行Berenbergのアナリストは述べている......全て読むにはこちらをクリック!