FXニュース:中東情勢緊迫化でリスク回避
東西FXニュース – 2024年4月5日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米雇用統計イベント前の調整
- 米新規失業保険申請件数増加
- 安全資産買い米長期金利低下
- 米FRB高官達がインフレ警戒
- 中東懸念で原油先物価格急騰
- 日米株安低リスク通貨円買い
- 日銀総裁発言追加利上げ予想
- 欧豪通貨リスクオフ利益確定
今日2024年4月5日金曜日の日本の東京外国為替市場の9時頃から17時頃までの対ドル円相場の為替レートは、円の高値でドルの安値の150円81銭付近から、円の安値でドルの高値の151円36銭付近の値幅約56銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円の終値は151円34〜36銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の151円69〜70銭付近の前東京終値比で約35銭の円高ドル安であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨日の日本市場終了後の日本時間の昨夜20時30分に公開された欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会議事要旨の内容は市場の想定範囲内であったが、先日にサプライズの利下げを実施したスイスの中央銀行にあたるスイス国立銀行 (SNB / Swiss National Bank) のスイスフランに対し欧州ユーロが上昇した影響の波及などから対ドルでも欧州ユーロが一時は上昇していたが、今夜この後に米国中央銀行制度の米国連邦準備制度理事会 (FRB/ Federal Reserve Board) が米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) で米国の新政策金利や金融政策を決める上で重視している最新米国重要経済指標の米国雇用統計発表のイベントを控え、市場予想に対する上振れへの警戒感などから対ドルの持ち高調整や利益確定の欧州ユーロ売りのドル買いなどが入り、ドルが反発したため、対ドルの円相場にも影響が波及し、昨夜21時頃からの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場の始値は、一時151円74銭付近のドル高値圏から始まった。
米国ニューヨーク債券市場でも、米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が昨夜21時25分頃の一時4.377%付近の高利回りに向けて上昇していた時間であったため、日米金利差拡大による円売りドル買いも加わったことで、昨夜21時20分頃にドルは円相場で一時151円77銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録していた。
しかし、米国ニューヨーク外国為替市場で昨夜21時30分に発表された最新米国経済指標の前週分の米国新規失業保険申請件数が、前回の21.0万件が前回21.2万件に下方修正されたことに加えて、市場予想の21.4万件よりも弱い22.1万件に悪化した。
前週分の米国失業保険継続受給者数は前回の181.9万人と前回上方修正の181.0万人と市場予想の181.3万人よりも強い179.1万人に改善されていたことでは強弱混合であったものの、同時発表だった2月の米国貿易収支が前回の-674億ドルと前回下方修正の-676億ドルと市場予想の-673億ドルに対し-689億ドルに悪化したことも嫌気され、安全資産の米国債買いに伴う利回り低下の影響で、米国長期金利が反落を始めたため、市場高値後のドルの利益確定売りに加えて、日米金利差縮小時の円買いドル売りが起き、昨夜22時45分頃には米国長期金利は一時4.32%台付近に下げたため、ドルも円相場で一時151円50銭付近にまで低下していた。
しかし、昨夜23時頃から米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の米国フィラデルフィア連銀のパトリック・ハーカー総裁の発言があり、「米国のインフレ率は、依然として高すぎる」とインフレ警戒感を示したことでは、早期の米国利下げ予想が後退し、深夜過ぎには主要通貨に対して151円70銭付近に向けてドルが買い戻された。
続いて、午前1時15分頃からは次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の米国リッチモンド連銀のトマス・バーキン総裁の発言でも、最近の米国インフレ指標の上振れデータを踏まえて、まだ確信を持つことができない「やや心もとない」データであり、「季節的な要因などの影響もあるのかもしれないが、経済見通しに本当に変化が起きているのか、それとも、インフレの道筋における一時的な凸凹道なのかと疑問が湧いている」ため、「我々FRBは、時間をかけて、対応するのが賢明」で、「米国インフレの再燃は、誰も望んでいない。米国労働市場が好調であることを考慮すると、米国の利下げを開始する前に、インフレ再燃に関する懸念を払拭する時間を我々は持つことができる」と、米国インフレ再燃警戒と米国利下げ開始に慎重な姿勢を示した。
午前1時45分頃からは米国シカゴ連銀のグールズビー総裁の発言もあり、現在の米国インフレのリスク要因は、根強い住宅価格やサービス価格のインフレ問題があることを指摘し、「米国のインフレの動向を、注意深く監視している」が、もしも、これらの住宅インフレやサービスインフレが下がらない場合は、「全体的な米国インフレ率を目標の2%に戻すのが、非常に難しくなるだろう」と、長期化を踏まえたインフレ警戒感を高めていた。
午前2時過ぎには次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の米国ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁の発言も報道され、米国のインフレ抑制の進展が滞る場合には、「年内の米国利下げは必要なくなる可能性がある」というタカ派発言があった。「米国経済が堅調を維持する場合には、景気要因のインフレ圧があるために、特にそうなる」とも強調していたことや、他のFRB高官達の米国インフレ警戒や利下げに慎重な発言も続いていたことなどから、午前2時6分頃から9分頃までの数分間、ドルは円相場で一時151円69銭付近の高止まりを見せた。
しかし、中東情勢緊迫化のニュースを受けて事態は一転し、同時進行していた米国ニューヨーク株式市場では、米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官達の発言のニュースを受けて、今年早期の米国利下げ予想後退と高金利長期化への警戒感による企業決算懸念の株売りに加え、米国でイスラエルとイランのニュース速報を受け中東情勢への懸念と警戒感が高まり、原油先物価格が急騰し、地政学的なリスク回避のリスクオフ (Risk-off) の株売りでも米国主要株価が急反落したため、世界的な安全資産の米国債買いによる米国債券価格上昇に伴う利回り低下の影響で米国長期金利が低下した日米金利差縮小の円買いドル売り加えて、米国主要株価下落時のリスク回避のリスクオフで買われやすいドルからでも買える低リスク通貨の円買いが起きたことで、 対ドルの円相場は一時急騰し、午前4時0分頃に対ドルの円相場は151円12銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
米国ニューヨーク外国為替市場よりも早めに終値を迎える米国ニューヨーク株式市場では、米国主要株価三指数の米国ダウ工業株30種 (Dow Jones Industrial Average) と米国ナズダック総合 (NASDAQ Composite) が前日比で大幅に下落して終値を迎え、米国S&P500種 (Standard and Poor’s 500) は比較的小幅ではあったものの前日比で下落した。
また、この中東情勢懸念のリスク回避トレンドは今日の日本の株式市場にも受け継がれる大きなトレンド形成となった。
一方で、米国インフレ横ばいや最新米国重要経済市場の「今後のデータ」次第では、今年年内の米国利下げ時期が遅れる可能性に加えて、年内の米国利下げが見送られる可能性も意識されたことでは、今夜この後の米国雇用統計の発表イベントを控えたドルの買い戻しや持ち高調整も入っていたが、イベントリスクによる様子見や買い控えの抵抗も交えていた。
このため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の安値でドルの高値の151円77銭付近から、円の高値でドルの安値の151円12銭付近の値幅約65銭で、今朝6時頃のニューヨーク終値は151円34銭付近と、前営業日の前ニューヨーク終値の151円70銭付近と比較すると、約36銭の円高ドル安をつけていた。
今朝8時30分には日本の最新経済指標の2月の日本全世帯家計調査の消費支出が発表され、前年同月比は前回の-6.3%と市場予想の-3.0%に対し-0.5%に改善された。また、3月の日本の外貨準備高は前回の1兆2815億ドルから1兆2906億ドルに増加していた。
今朝9時頃から始まった今日の日本の東京外国為替市場の対ドル円相場の始値は一時151円30銭付近で、今朝9時55分の日本市場の仲値決済に向けては、今日は日本の貿易企業の決算日が集中しやすい5と10が付く日の五十日(ごとおび / ゴトーび)で売買が交錯したが、今朝までの米国市場トレンドの中東情勢への警戒感によるリスク回避のリスクオフ (Risk-off) の影響で、今日の東京株式市場でも日経平均株価が大幅に急落したため、日米の株安時に買われやすい国内第一安全資産の低リスク通貨の円買いが日本市場でもより大規模に起きたため、ドルや欧州ユーロなどの主要通貨に対する円相場が急騰し、今朝9時15分頃と今朝10時19分頃に対ドルの円相場は一時150円81銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
また、今朝発行の朝日新聞社のインタビューで、日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) の植田和男総裁は、「夏から秋にかけて、目標達成の可能性がどんどん高まっていく」と2%の物価安定目標について発言していたことや、「為替の動向が、賃金と物価の循環に無視できない影響を与えそうだということになれば、金融政策として対応する理由になる」と、円安についても言及していたことから、市場では151円台後半から152円手前付近の為替介入警戒が意識されると共に、今年夏から秋にかけての追加利上げ予想も浮上した。
しかし、ドル円チャートでテクニカル分析的なダブルボトム (Double Bottom) の「毛抜き底」を描いて二度目で底を抜けきれなかった後からは、今夜この後の米国雇用統計の上振れ警戒感や、産油国のある中東情勢警戒による原油高も車社会の米国のインフレ圧になるため、市場安値圏からの円の利益確定やドル買い調整の抵抗も入り始めた。
今日の日本のニュースでも、今朝未明までの前述の米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官達のタカ派発言などが報道されていた。
イスラエルのシリアのイラン大使館への空爆を巡る中東情勢の緊迫化のニュースが続き、米国のバイデン大統領がイスラエル首相にガザ停戦を懇願し、米国の今後のイスラエル支援への不透明感を示唆するニュースなどもあったが、米国関与の懸念がある中で、懸念が少ない低リスク通貨の円が買われる値動きもあるものの、原油価格高騰は日本の貿易赤字リスクを高めるため、リスク回避の円買いに一定の利益確定売りや調整を加えていた。
今日の午後15時台には日経平均株価は3万8,992円8銭の終値をつけ、今朝は一時前日比で1000円安への懸念さえもあったものの、その後はやや下げ幅を縮めたが、前日比で781円6銭安の大幅安で大引けしたことは、日本市場では低リスク通貨の円買いトレンドも継続していた。
ただし、午後からの欧州英国市場の参入では、中東情勢懸念の地政学リスクでは欧州ユーロが売られやすかったために、低リスク通貨の円だけでなく、世界的に流動性が高い安全資産のドルに対しても欧州ユーロが売られていた影響の波及もあり、円相場でもドルがやや反発したが、今夜この後の米国雇用統計のイベント前のイベントリスクによる調整だけでなく様子見の買い控えも入っていたことでは、日本市場の東京終値時の今夜17時0分に瞬時記録した一時151円36銭付近が今日の日本市場の円の安値でドルの高値となった。
夕方から本格参入の英国ロンドン外国為替市場でも、中東情勢警戒リスク回避で英国主要株価が下落を始めた影響があり、リスク市場に弱い欧州や英国通貨売りに対する安全資産のドルや低リスク通貨の円が買われていた。
このため、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は151円34〜36銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の151円69〜70銭付近の前東京終値比では約35銭の円高ドル安になっていた。
今夜この後には、最新米国重要経済指標の発表イベント予定と、米国連邦準備制度理事会 (FRB) の高官達の発言予定も続き、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜21時30分に世界的な注目を集めている米国重要経済指標の3月の米国雇用統計の3月の米国非農業部門雇用者数変化 (NFP / Non-Farm Payrolls) 、3月の米国製造業雇用者数、3月の米国失業率、3月の米国平均時給が発表されるため、イベント時の値動きには注意が必要である。同じく、今夜21時30分頃から米国ボストン連銀のコリンズ総裁の発言予定、今夜22時15分頃から次回の米国公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国リッチモンド連銀のバーキン総裁の発言予定、深夜24時0分頃から米国ダラス連銀のローガン総裁の発言予定、25時30分頃から次回のFOMC投票権を持つFRBのボウマン理事の発言予定、28時に2月の米国消費者信用残高が発表される予定があり、イベント日のため、以前に収録されたインタビューの掲載や、米国雇用統計発表直後の反応を見る突撃インタビューなど、他にもFRB高官発言が発表される可能性も高い。
一方、欧州ユーロの円相場は、今夜17時の今日の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は164円2~4銭付近と、日本市場の前営業日同時刻にあたる昨日17時の164円66~67銭付近の前東京終値比で約64銭の円高ユーロ安であった。
主な要因は、前述の通り、中東情勢の緊迫化を受けたリスク回避市場ではリスク市場に弱い欧州ユーロや英国ポンドが売られやすく、世界的に流動性の高い安全資産でもあるドルやドルからでも買える安全資産の低リスク通貨の円が買われやすかった。
そのため、ユーロドルも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0838〜1.0840ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の1.0854〜1.0856ドル付近の前東京終値比では約0.16セントのユーロ安ドル高であった。
英国ポンドも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は191円8〜14銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日17時の192円4〜10銭付近の前東京終値比では約96銭の円高ポンド安であった。
なお、今日のリスク回避のリスクオフ市場の低リスク通貨の円買いでは、豪ドルも利益確定もあって売られやすく、円相場で昨夜に記録した一時100円台から99円台に戻しており、今夜17時の豪ドル円の東京終値は99円58〜62銭付近の円高豪ドル安であった。
一方で、ドルや円に続く、第三の安全資産とも考えられている中立国のスイスフランは、イベントリスクでドルが買いにくい時間の今夜は買われており、前日比でスイスフランの円相場もやや反発している。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2024年4月5日の日本時間(JST)19時41分(チャート画像の時間帯は、3月最終日曜日から英国夏時間 (BST / British Summer Time) に1時間時差変更され、日本から時差8時間遅れになった英国ロンドン外国為替市場の英国夏時間 (BST / GMT+1 / JST-8) の11時41分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。(なお、米国市場では3月第二日曜日から米国夏時間 (EDT / Eastern Daylight Time / JST-13) になっていたが、今回の変更で、EDTは英国冬のGMT-5から夏のGMT-4に変更された。)
通貨ペア | JST 19:41の為替レート | 前営業日JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 151.34 〜 151.35 | -0.35 (円高) |
ユーロ/円 | 163.96 〜 163.97 | -0.70 (円高) |
ユーロ/ドル | 1.0832 〜 1.0834 | -0.0022 (ドル高) |
英ポンド/円 | 191.18 〜 191.24 | -0.86 (円高) |
スイスフラン/円 | 167.57 〜 167.63 | +0.31 (円安) |
豪ドル/円 | 99.62 〜 99.66 | -0.37 (円高) |
注意:
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