FXニュース:今夜パウエル議長発言控え
東西FXニュース – 2023年11月8日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
今日2023年11月8日水曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の高値でドルの安値の150円35銭前後から円の安値でドルの高値の150円76銭前後の値幅約41銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は150円67~68銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の150円46~47銭付近の前東京終値比で約21銭の円安ドル高であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨夕の英国ロンドン外国為替市場では、昨日発表された欧州ユーロ圏主要国ドイツの9月の独鉱工業生産指数が4ヶ月連続で低下し、市場予想よりも大幅な低下を見せたことで欧州景気懸念が再燃して安全資産のドイツ国債が買われたため、債券価格上昇に伴う利回り低下で欧州長期金利が低下し、欧米金利差による欧州ユーロ売りのドル買いの影響が円相場にもドル上昇圧として波及しており、ドルは円相場で150円台前半から中盤付近に向けて上昇していた。
また、昨日の東西FXニュースでもお伝えしていた通り、英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE / Bank of England) のチーフエコノミストのピル氏が、英国利上げ終了時期に関する発言をしており、来年にも利下げに転ずる可能性から対ドルの英国ポンド売りも入っていたこともあり、欧州英国市場の後半にあたる日本時間の昨夜22時頃から始まった冬時間の米国ニューヨーク外国為替市場のドル円の始値は150円55銭付近であったが、欧州ユーロや英国ポンドに対するドル高が進行した影響が円相場にも波及したため、昨夜23時36分頃にドルは円相場で一時150円69銭付近の欧米市場の円の安値でドルの高値を記録した。
しかし、同米国市場で発表されていた最新米国経済指標の9月の米国貿易収支は前回の-583億ドルと前回修正の-587億ドルと市場予想の-599億ドルに対し-615億ドルと赤字額が増えていたことでは、米国景気減速予兆への懸念もありドルの上値は重くなっていた。
一方で、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) 高官達の発言の影響も見られ、FRBのウォラー理事は先日発表された第3四半期の米国国内総生産 (GDP) の成長率は、「傑出した四半期の爆発的な数値だった。今後の政策を検討する上で、非常に注視している」と言及し、今後の米国の金融政策や追加利上げの有無を検討する際に、米国経済指標の強さによるインフレ圧や米国のインフレ動向、米国長期金利の上昇の影響が景気にどのように波及するかを考慮し、データを注視している姿勢がニュース報道で伝わった。
FRBのボウマン理事は、同GDP統計が示したものは、米国経済が「堅調さを維持」しているだけでなく、「米国のインフレ率を、適時に2%の目標に抑制するためには、米国政策金利誘導目標のフェデラル・ファンド (FF) 金利を、更に利上げする必要があると引き続き予想している」とタカ派寄りの発言をしたが、次回の米国金融政策決定に関しては、「データ次第で、今後入ってくるデータも注視していく」との発言も付け加えていた。
米国ダラス連銀のローガン総裁も、「米国のインフレは、依然として高すぎる」と、米国インフレ警戒によるタカ派寄りの発言があったが、今夜この後の翌米国市場では市場への影響力が大きいFRBのパウエル議長の発言予定を控えており、一部ではハト派予想も出ていたことなどから、タカ派発言を受けた持ち高調整の他にもイベント前の様子見の買い控えなども入ったことは、タカ派発言影響のドルの上値をハト派発言予想が抑える形になっていた。
また、昨夜の米国ニューヨーク債券市場では午前3時に米国3年債の入札があり、米国債買いによる債券価格上昇に伴う利回り低下の影響が他の米国債にも波及したため、昨夜23時台までは一時4.6%台だった米国長期金利が入札後には一時4.5%台に低下したため、日米金利差縮小時の円買いドル売りが抵抗要因になり、午前4時19分頃に米国市場の安値圏の一時150円31銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
このため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の安値でドルの高値の150円69銭前後から円の高値でドルの安値の150円31銭前後の値動きで、今朝7時前頃のニューヨーク終値は150円37銭付近と、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値比で約30銭の円安ドル高をつけていた。
今朝早朝のオセアニア市場でも、午前7時10分頃に米国長期金利の低下を受けて一時150円30銭付近を記録したが、その後には米国長期金利が反発し戻し始めたため、ドルも円相場で再上昇を始めた。
今朝9時頃からの今日の日本の東京外国為替市場では、早朝に米国長期金利が一時4.561%付近まで低下したため、日米金利差縮小時の円買いドル売りで始まり今朝9時16〜17分頃にかけてドルは円相場で一時150円35銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
しかし、今朝9時55分の日本市場の仲値決済に向けては、日本企業の輸入実需の円売りドル買い需要もあり、また今日の日本市場時間の時間外米国債券市場で米国長期金利の指標となる米国10年債の利回りが反発上昇を始めたことを受けて、金利抑制の日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) との日米金利差トレードも活発になり、ドルは円相場で上昇した。
日本市場でも、今夜の米国連邦準備制度理事会 (FRB) のパウエル議長の発言予定が注目され、持ち高調整や様子見の会控えなども入っていたが、米国のインフレ圧が意識されており、米国政策金利の据え置き後にも、マイナス金利の日本よりも米国の高金利が長期間維持されるとの市場予想が優勢で、円の上値を抑えていた。
一方で、今朝の衆院財務金融委員会で、日本銀行 (日銀 / BoJ) の植田総裁が為替相場に関して、「ファンダメンタルズ (経済の基礎的条件) に沿って、安定的に推移することが望ましい」と発言しており、日本政府と日銀の為替介入のトリガーと考えられている急激なボラティリティ (価格変動) に警戒した抵抗とやや横ばいに近い値動きも混ざった。
なお、植田日銀総裁は、急激な円安は厳格な長短金利操作のイールドカーブ・コントロール (YCC / Yield curve control) の副作用に含まれるかとの質問に対し、「長短金利操作運用が、市場のボラティリティー (価格変動) を高めて、為替レートのボラティリティーも高まる場合は、副作用に含めて考えていい」と発言しており、今後の修正予想に影響を与えた。
また、今日の日経平均株価 (Nikkei 225 / JP225) が下落したことも、リスク回避の低リスク通貨の円買いの円安抵抗になったことでは、米国長期金利上昇に伴う円相場でのドルの上昇はやや穏やかなものになっていた。
しかし、午後からの欧州英国市場の参入が始まり、米国長期金利が再び4.6%台に上昇したため、日米金利差拡大による円売りドル買いが再開し、ドルは円相場で150円台後半に上昇し、午後16時半頃に一時150円75〜76銭付近の今日の日本市場の円の安値でドルの高値を記録した。
そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は150円67~68銭付近と、昨夜17時の150円46~47銭付近の前東京終値比では約21銭の円安ドル高になった。
また、今夜19時15分頃から、米国連邦準備制度理事会 (FRB) のクック理事が、アイルランドのダブリンでアイルランド中央銀行が開催した金融システム会議で講演し、「ロシアがウクライナに対して継続している戦争は、食料やエネルギーなどの商品の地域貿易の混乱の持続を含めて、様々な形で多くの経済を圧迫し続けている」と、ロシアや中東や中国などの情勢に関連した地政学的リスクと価格高騰などのインフレ懸念に関する発言をしており、今週のFRB高官の発言には、インフレ警戒の発言が目立ってきており、今夜の英国ロンドン外国為替市場では、今日の日本市場の円相場でのドルの高値を上抜けし、今夜19時35分頃に一時150円79銭付近も記録している。
今夜この後には、米国最新経済指標の発表予定や、注目の米国連邦準備制度理事会 (FRB) のパウエル議長を含めた高官達の発言予定と米国債入札予定などが続き、日本時間の今夜の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜21時に最新経済指標の米国MBA 住宅ローン申請指数、23時15分頃からFRB高官の中でも特に市場の注目度が高いパウエル議長の発言予定、深夜24時に9月の米国卸売売上高、24時半に米国週間原油在庫、27時に利回りが米国経済指標の指標となる米国10年債の入札予定、27時40分頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の発言予定、28時頃から同じくFOMC投票権を持つFRBのバー副議長の発言予定など、為替相場の値動きに影響を与える可能性が考えられるために市場予想材料とされている。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は160円92〜93銭付近と、前営業日同時刻の昨夜17時の160円94〜96銭付近の前東京終値比で約2銭の僅差の円高ユーロ安であった。
主な要因は、先述の欧州景気懸念による安全資産買いの影響で欧州長期金利が低下したことで、対ドルのユーロ安が円相場にも波及したことや、今日の午後16時に発表された欧州ユーロ圏の最新経済指標のドイツの10月の独消費者物価指数 (CPI) の改定値は前月比が0.0%で前年同月比が3.8%といずれも前回と市場予想一致の横ばいで、16時45分に発表されたフランスの9月の仏貿易収支は前回の-82.02億ユーロと前回修正の-83.30億ユーロに対し-89.17億ユーロに赤字額が増加しており、9月の仏経常収支も前回の-8億ユーロと前回修正の-11億ユーロに対し-25億ユーロと悪化し、欧州景気懸念のユーロ売りで安全資産のドル買いや低リスク通貨の円も買われたことが、実質的な日欧金利差はあるもののユーロに対する円安の抵抗要因になっていた。
このため、ユーロドルも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0679〜1.0683ドル付近で、昨夜17時1.0696〜1.0697ドル付近の前東京終値で約0.17セントのユーロ安ドル高だった。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンドの円相場の終値は184円93〜99銭付近で、昨夜17時の185円31〜37銭付近の前東京終値比で約38銭の円高ポンド安であった。
主な要因は、欧州景気懸念の影響や前日の英国経済指標による英国景気懸念に加えて、英国中央銀行のイングランド銀行 (英中銀 / BoE / Bank of England) のチーフエコノミストのピル氏の発言を受けた来年の英国利下げ時期に関する市場予想の英国ポンド売りが影響を及ぼした。
ただし、今夜18時半頃からの英中銀のベイリー総裁の発言では、「今後2年以内に、英国のインフレ率が目標の2%に抑制できると予想」しており、「英国のインフレ抑制のために、金融政策を維持する必要があり、利下げについての議論は時期尚早」であるとしている。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2023年11月8日の日本時間(JST)20時27分(チャート画像の時間帯は、日本から時差で9時間遅れの英国ロンドン外国為替市場の冬時間 (GMT / JST-9) 11時27分頃。なお、サマータイム制のある米国市場も今週から冬時間になり、日本との時差が1時間広がり14時間遅れのJST-14 / GMT-5になった) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 20:27の為替レート | 日本市場前営業日17時の前東京終値時間比 |
ドル/円 | 150.72 〜 150.74 | +0.26 (円安) |
ユーロ/円 | 160.90 〜 160.91 | -0.04 (円高) |
ユーロ/ドル | 1.0674 〜 1.0676 | -0.0022 (ドル高) |
英ポンド/円 | 184.87 〜 184.93 | -0.44 (円高) |
スイスフラン/円 | 167.31 〜 167.37 | +0.21 (円安) |
豪ドル/円 | 96.95 〜 96.99 | +0.29 (円安) |
注意:
本ウェブサイトに記載されている全ての情報またリンク先を含めた情報は、情報提供を目的のみとしており、取引投資決定、及びその他の利用目的のために作成されたものではありません。取引投資種、外国為替取引業者の選択、売買価格投資等の全ての最終決定については、利用者ご自身のご判断において行われるようお願い致します。
当社は、当サイトに掲載した情報によって万一閲覧者が被った直接・間接的に生じた損失に関して一切責任を負わないものとします。また、当社および当社に情報を提供している第三者は一切責任を負うものではございませんので ご了承ください。万が一、当サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社は一切責任を負いません。当社はこのウェブサイトの掲載内容を予告なしに変更または廃止することがございますので、あらかじめご了承おきください。