FXニュース:今年最大の円安ドル高更新
東西FXニュース – 2023年9月21日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 米金融引き締め長期化予想
- 米FOMC政策金利据え置き
- 米政策金利見通し上方修正
- 2024年末の中央値が5.1%
- パウエル議長のタカ派発言
- 米長期金利が一時4.44%台
- 日経平均株価が大幅に下落
- スイスと英新政策金利発表
今日2023年9月21日木曜日の日本の東京外国為替市場の9時から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値でドルの高値の148円46銭前後から円の高値でドルの安値の148円19銭前後の値幅約27銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は148円24~25銭付近と、前営業日同時刻の昨日17時の148円11~12銭付近の前東京終値比で約14銭の円安ドル高であった。
今日の日本市場では、今朝9時32分頃に一時148円45〜46銭付近と、昨年2022年11月4日以来の今年最大の円安ドル高の記録を再更新した。
今日の為替相場の値動きの主な要因と世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場で、日本時間で今朝未明の午前3時に米国連邦公開市場委員会 (FOMC) が新政策金利と金融政策の声明を発表したが、米国フェデラル・ファンド (FF) 金利目標は現状の5.25〜5.50%の据え置きがされた一方で、声明文では、米国経済は堅調なペースで拡大していると今年と来年の米国景気の成長率の見通しを上方修正し、今後の米国政策金利の見通しのドット・チャートも今年2023年末時点の中央値は5.6%と年内に0.25%の追加利上げを示唆する内容を維持した上で、来年2024年末時点の予想中央値を前回の4.625%から5.125%に引き上げ、再来年の2025年末時点の予想中央値も前回の3.375%から3.875%に上方修正され、市場では堅調な米国景気を背景とした金融引き締め長期化予想により、主要通貨に対してドルが買われ、発表前にはイベントリスクにより一時147円台中盤付近で推移していたドルは、発表時の午前3時に円相場で再び148円台に高騰し、発表後の午前3時15分頃には148円11銭付近に上昇した。
続いて、午前3時半頃から世界市場が注目していた米国連邦準備制度理事会 (FRB) のジェローム・パウエル議長の発言があり、米国連邦公開市場委員会 (FOMC) 終了後の定例記者会見で、今後の米国雇用市場の見通しや米国政策金利見通し (ドットチャート) の解説などを含めながら、今回の米国の新政策金利の据え置きについて、2%が目標の「我々には物価安定のための責任がある」 (Price stability is our responsibility) ことを強調し、現状の金融政策のインフレ抑制効果を確認するために、「現状では維持という形で、今後のデータを待つ事になる」と、「今後の利上げはデータ次第」という慎重な姿勢は保ちつつも、「米国インフレが2%の目標に向けて持続的に抑制されていくと確信できるまでは、金融引き締めを維持する」ことや、「適切であれば、追加利上げの用意がある」とタカ派の発言をした。
市場ではパウエル議長のタカ派寄りの発言を受けて、米国高金利の長期化予想や年内に追加利上げの可能性の見通しが出ていたこともあり、米国長期金利の指標となる米国10年債の利回りが上昇し、午前5時50分頃には米国長期金利は2007年11月以来の4.416%付近の高利回りを記録し、円安要因の日米金利差拡大による円売りドル買いが続き、午前5時55分頃に一時148円35〜36銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録し、この時点での昨年2022年11月4日以来の今年最大の円安ドル高記録を更新した。
また、米国の金融政策の影響を受けやすいと考えられている米国2年債の利回りも、一時5.1758%付近の2006年7月以来の高利回りを記録したことで、日米金利差拡大が顕著な金利抑制の日本銀行 (日銀 / BoJ) の大規模緩和金融政策が現状で維持されている円相場以外にも、欧州ユーロなどの主要通貨に対してもドルが買われた影響が円相場に波及していたため、同日の米国ニューヨーク株式市場では米国政策金利の先高感への企業決算への警戒感などから米国株安時のリスク回避のリスクオフ円買いの抵抗が一時は混ざっていたにも関わらず、ドルは円安要因の日米金利差拡大予想により円相場で年内高値記録を更新していた。
そのため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の147円48銭前後から円の安値でドルの高値の148円36銭前後の値幅約88銭の値動きで、今朝6時頃のニューヨーク終値は148円34銭付近と、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値比で約48銭の円安ドル高をつけていた。
今朝9時頃から始まった今日の日本の東京外国為替市場でも、米国金融引き締めの長期化予想や、必要であれば年内にさらに利上げする用意があるというパウエル議長のタカ派発言を受けて、日本市場時間の時間外の米国債券市場では米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が4.44%台に更に上昇し、円安要因の日米金利差拡大による円売りドル買いで今朝9時25分頃に148円45銭付近をヒットし、しばらく高止まりを続ける形で9時32分頃に一時148円45〜46銭付近の今年最大の円安ドル高の記録を再更新した。
年内最大の高値後のドルには、日本政府と日本銀行 (日銀 / BoJ) の為替介入警戒感もあり、利益確定売りの抵抗が混じり、今朝9時55分の日本市場の仲値決済でも、輸入実需と輸出企業の売買が交錯した。
米国長期金利は、今朝10時1分には一時4.449%付近と2007年11月以来の高利回りの記録を更新したため、今朝10時7分頃にもドルは円相場で一時148円45付近に再上昇したが、今朝の前回の高値を上抜けなかったことでは、テクニカル分析的なダブルトップの売りサインを描く形で、為替介入警戒感による利益確定売りと持ち高調整や、明日に結果発表予定の今日から始まった日銀金融政策決定会合を控えた円の持ち高調整などが入り始めたほか、今日の日経平均株価 (Nikkei 225 / JP225) が日本の主要貿易先である米国の今朝までの米国株式相場下落の金利警戒トレンドの影響もあり大幅な下落を始めたため、日本株安時のリスク回避で国内第一安全資産の低リスク通貨の円買いが入ったことは、今朝の円安後の円相場の抵抗要因となった。
また、今朝の日本のニュースでは、日本政府の松野博一官房長官が円安進行について、「為替市場の動向を、高い緊張感を持って注視し、過度な変動 (ボラティリティ) に対しては、あらゆる選択肢を排除せず、適切な対応を取りたい」と記者会見で円安牽制の発言をしており、前日本市場で神田真人財務官も同様の円安牽制発言をしていたこともあり、年内記録更新後には、日本市場で日本政府と日銀の円買い為替介入への警戒感が強まった。
今朝11時32分頃には、米国長期金利が一時4.3%台に向けて下げた影響もあり、ドルは円相場で一時148円19銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
しかし、米国長期金利は再び4.4%台に向けて反発したこともあり、日米金利差による円売りドル買いも根強く、午後15時15分には今日の日本の東京株式市場で日経平均株価が3万2571円3銭の終値と前日比452円75銭安の大幅安で大引けしたことでは、日本株安時のリスクオフ (リスク回避) の低リスク通貨の円買い抵抗があったものの、午後からの欧州英国市場の参入もあり、ドル円が148円台前半の推移を続けた。
なお、今日の午後16時半には、欧州近辺のスイスの新政策金利の発表があり、スイス国立銀行 (SNB) の3カ月物銀行間取引金利誘導目標の中心値は、前回と同じ1.75%に据え置きの決定がされたが、市場予想では2.00%に向けて0.25%の小幅利上げの予測値も出ていたたことから、市場予想値を下回ったことでドルなどの主要通貨に対してスイスフランが一時売られた動きも外貨に影響が波及していた。
そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円相場の終値は148円24~25銭付近で、昨夜17時の148円11~12銭付近の前東京終値比で約14銭の円安ドル高になった。
ただし、今夜の英国ロンドン外国為替市場では、明日発表予定の日銀の金融政策決定会合の発表を前にした低リスク通貨の円の持ち高調整なども入り始めたことでは、今夜19時台にはドル円は前東京終値日比ではやや小幅な円高ドル安にも転じている。
今夜この後には、現在進行中の欧州英国市場では、英国中央銀行のイングランド銀行 (英中銀 / BoE) の新政策金利発表のイベントと英中銀金融政策委員会 (MPC) 議事要旨公開予定を日本時間の今夜20時頃に控えているほか、今夜23時頃から欧州中央銀行 (ECB) 理事会のラガルド総裁の発言予定などのイベントも控えている。
また、今夜この後の21時頃からの米国市場でも、最新米国経済指標の発表予定があり、日本時間の経済指標カレンダーでは今夜21時半に、4〜6月の第2四半期の米国経常収支と、前週分の米国新規失業保険申請件数と米国失業保険継続受給者数、9月の米国フィラデルフィア連銀製造業景気指数が同時に発表され、23時には8月の米国中古住宅販売件数と8月の米国景気先行指標総合指数などが発表される予定である。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は157円98~99銭付近で、昨夜17時の158円34~36銭付近と比較すると約36銭の円高ユーロ安であった。
主な要因は、昨夜の欧州株式市場は堅調で、米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の発表まではユーロが買われていたものの、発表後の米国政策金利の見通しの先高感や米国金融引き締め長期化予想とパウエル議長のタカ派発言を受けて、欧米金利差予想により対ドルでユーロ売りに転じたユーロ安の影響が、円相場にも波及していた。
このため、ユーロドルも、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0656~1.0658ドル付近で、前営業日同時刻の昨夜17時の1.0689~1.0691ドル付近の前東京終値比では約0.33セントのユーロ安ドル高だった。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の英ポンド円相場の終値は182円50~56銭付近と、前営業日同時刻の昨夜17時の183円0~6銭付近の前東京終値比で約50銭の円高ポンド安であった。
主な要因は、今夜この後の日本時間20時に英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE) の金融政策委員会 (MPC) が、英国の新政策発表などのイベントを控えているため、英国ポンドのイベントリスクが高まっていることに加えて、今回は0.25%の小幅利上げの市場予想がやや優勢ではあるものの、昨日の英国消費者物価指数 (CPI) の最新データを受けた一部の英国政策金利の据え置き予想や、英国の利上げサイクルの終了時期が近づいてきているとの市場予想も出ており、ドルなどの主要通貨への英国ポンド売りが影響を及ぼしていた。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2023年9月21日の日本時間(JST)19時28分(チャート画像の時間帯は英国ロンドン外国為替市場時間の夏時間 (GMT+1 / BST) 11時28分) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:28の為替レート | 日本市場前営業日17時の前東京終値時間比 |
ドル/円 | 147.93 〜 147.95 | -0.18 (円高) |
ユーロ/円 | 157.70 〜 157.71 | -0.64 (円高) |
ユーロ/ドル | 1.0659 〜 1.0661 | -0.0030 (ドル高) |
英ポンド/円 | 181.89 〜 181.95 | -1.11 (円高) |
スイスフラン/円 | 163.54 〜 163.60 | -1.47 (円高) |
豪ドル/円 | 94.76 〜 94.80 | -0.89 (円高) |
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