文/安藤麻矢 – 東西FXリサーチチーム
米中貿易摩擦は依然収まりを見せず、市場の不透明感が高まり新興国通貨市場を揺るがせている。表面上は貿易リスクへの回避のためにトランプ大統領と習近平国家主席貿易は両国二とってベストな対策を練っているように見られるものの、各国のアナリストの見解は貿易摩擦がエスカレートする可能性も示唆している。過去6週間の米ドルは110―112円のレンジ内にほぼ納まり、ボックス相場が続いているとレポートされるが、近年の外為市場動向を見ると、ボックス相場後には高ボラティリティ相場の出現が見られていると言わる。米国の製造業活動の重要な指標が14年ぶりの高水準にまで上昇したことから、ドル指数(同指数)は2週間近く高値を維持した。 10年物米国財務省の利回りは、2.89%下落した。
米中貿易摩擦からの投資家不安に加えて、トルコショック問題がある。先月8月は新興国通貨の対ドル下落率が月間2ケタ代を記録し中でも3割の下落率があったトルコリラとアルゼンチンペソなど、今後のエマージェント市場の先行不安が高まっている。トルコリラの暴落は円に対しても大きく影響し高いスワップポイント狙いが裏目に出て、莫大な資金がロスカットされたのではないかと言われている。
現在為替市場では新興国通貨からの伝染的な通貨安も懸念されており、新興国通貨が不安定になることでリスク回避が強まり円高方向に振れる可能性があるという意見も見られる。一方、日興アセットマネジメントではアルゼンチンやトルコは国内要因が多く、新興国全体に波及する可能性は低いと為替動向レポートで述べている。
SMBC日興証券の新興国担当シニアエコノミスト、平山広太氏によると、アルゼンチン通貨危機のグローバルへのリスクセンチメントを冷やすことが、他の新興国市場からの資金流出を加速させていいて、さらには南アフリカランドやブラジルレアル、インドルピーなどにはその連想が働いていると述べている。南アフリカのランドは1.5%減、ロシアのルーブルは0.7%減、トルコのリラは0.6%減、インドルピーとメキシコペソはそれぞれ0.5%減であった。
新興国通貨はアメリカの利上げの大きい影響を受けるが、米国の金融政策についてはいまのところ性急な利上げの可能性は低く 、米国の利上げが緩やかに進むならば、新興国からの資金流出も収まっていく可能性があると日興アセットマネジメントは見ている。また、同社のレポートでは、新興国の景況感については、総合PMIをベンチマークに判断し、好不況の判断となる50を上回っており、 継続した上向き景気をしている。 個別国の18年4-6月期GDP成長率では、インドは2年ぶりの高成長となり、インドネシアでは顕著な成長が続き、製造業や建設業を背景にメキシコは経済は好調に伸びている。