FXニュース:米インフレ指標に注目集まる
東西FXニュース – 2024年1月11日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 日銀修正予想後退の円安進行
- 日米株価上昇時のリスク選好
- 米NY連銀総裁「しばらく維持」
- 欧ECB専務理事「時期尚早」
- 英BoE総裁「インフレ率重視」
今日2024年1月11日木曜日の日本の東京外国為替市場の9時頃から17時頃までの外為取引時間の対ドル円相場の為替レートは、円の安値でドルの高値の145円78銭前後から円の高値でドルの安値の145円23銭前後の値幅約55銭で、今夜17時の今日の東京外国為替市場のドル円の終値は145円41~42銭付近と、昨日17時の144円92~93銭付近の前東京終値比で約49銭の円安ドル高であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界FX市場のトレンド動向の分析はまず、昨夜の英国ロンドン外国為替市場では、欧州中央銀行 (ECB / European Central Bank) 理事会のシュナーベル専務理事が、欧州利下げ時期を議論するには「時期尚早」であり、欧州のインフレ率を目標とする2%に継続的に維持できるという確信が持てるまでは「ECBは欧州政策金利を、引き締め的な水準に保つだろう」などと、X (旧ツイッター) のツイートなどで発言していたニュースが話題になり、ドイツ国債の利回りなどが指標となる欧州長期金利が上昇し、日欧金利差拡大の円売りユーロ買いの円安ユーロ高が進行した。
一方で、メディアのニュースでも英国ロイター通信 (Reuters) などが、シュナーベルECB専務理事が「欧州失業率が過去最低水準付近に低下していることは、労働市場が力強い回復力を維持していることを示しており、これは先月の我々の予想とほぼ一致している。欧州のインフレ率低下に伴い、今年の賃金インフレ圧も緩やかに低下すると引き続き予想している」としており、今年の欧州利下げは予想されるものの、早期の利下げ時期予想には「時期尚早」との市場への牽制とも受け止められ、同じく早期の米国利下げ予想が後退していたドルに対しても欧州ユーロが買い戻され、英国市場でのロンドン・フィキシング (London Fixing) に向けた主要通貨に対するユーロ買いのフローも観測され始めた。
そのため、欧州英国市場の後半と重なる昨夜22時からの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は一時145円28銭付近から始まったが、欧州市場からの値動きが活発な昨夜22時28分頃に一時145円15銭付近の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
しかし、冬時間で日本よりも14時間の時差遅れで朝を迎えていた米国ニューヨーク外国為替市場では、昨日の日本市場の朝に発表されていた日本の最新経済指標の昨年11月の毎月勤労統計調査の現金給与総額の前年同月比が前回と市場予想の1.5%を大幅に下回る0.2%の賃上げ率に鈍化したことや、物価上昇率と見合わせた日本の実質賃金が20カ月連続で減少したニュースが話題になり、今年元旦の石川県能登半島地震以来後退していた日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) の今年早期の金融政策修正予想がさらに後退し、日米金利差予想により円安ドル高が進行した。
また、米国ニューヨーク株式市場でも、連日でバブル崩壊以来の高値を続伸していた日本の日経平均株価 (Nikkei Stock Average) のニュースが注目され、日経225先物 (Nikkei 225 Future) などが上昇したほか、米国主要株価三指数の米国ダウ工業株 (Dow Jones Industrial Average) 、S&P500 (Standard and Poor’s 500)、ナズダック (NASDAQ Composite) が揃って上昇したため、日米株価上昇時のリスク選好のリスクオン (Risk-on) 市場では、株安時のリスク回避のリスクオフ (Risk-off) では買われやすい低リスク通貨の円が売られやすくなり、円安ドル高の進行が続いた。
一方、同時進行していた英国市場では、昨夜23時15分頃から英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE / Bank of England) のベイリー総裁の発言があり、英国議会に出席した際に、英国のインフレ率について、現在の3.9%から目標とする2%の水準に戻すことが重要というインフレ率重視の発言をしたことが伝わり、英国ポンドの利下げ時期にもまだ早いとの市場での受け止めから、低リスク通貨の円売りで英国ポンドも買われる値動きがあった。
日本時間で冬時間は午前1時のロンドン・フィキシングの後の午前1時41分頃には、欧州英国通貨に対する円安圧の波及の影響もあり、対ドルでの低リスク通貨の円売りの影響も相まってドルは円相場で上昇し、一時145円82銭付近の米国市場の高値圏をつけていた。
ただし、深夜頃に発表されていた最新米国経済指標の昨年11月の米国卸売売上高は、前回の-1.3%と前回下方修正の-1.5%と市場予想の0.3%に対し0.0%と、前回よりは大幅に改善したものの市場予想には届かなかったことでは、欧州ユーロに対するドル売りの影響もあり、今夜この後の翌米国市場で最新米国重要経済指標の米国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) 発表イベントを控えているドルにはイベントリスクの持ち高調整と様子見も混ざり始めていたため、対ドル円相場のドル上昇にはやや抵抗も混ざった。
しかし、米国ニューヨーク債権市場では、午前3時の米国10年債の入札を受けた米国債売りや、日米株高のリスクオンにより、安全資産の米国債も売られていた影響で債券価格低下に伴う利回り上昇が起き、米国市場の開場の頃には欧州市場での欧米金利差予想などにより一時3.99%台に低下していた米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が一時4.04%台後半付近に上昇したため、日米金利差拡大による円売りドル買いが強まったほか、欧州ユーロなどの他の主要通貨に対する米国長期金利上昇時のドル買いも入り、午前5時15分頃にドルは円相場で一時145円83銭付近の米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。
同じく午前5時15分頃からは、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Open Market Committee) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) 高官の米国ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁の発言があり、FRBの2%のインフレ目標達成について、「完全に達成するためには、制限的な金融政策をしばらく維持する必要がある」と講演したことで、今夜この後に先月12月の米国消費者物価指数 (CPI) 発表イベントを控えた市場では今年早期の米国利下げ予想が確定値を下回り続けていたこともあり、米国長期金利が上昇時の日米金利差拡大と、市場予想でも円売りドル買いが継続したため、市場高値後の利益確定の中でもドルは円相場で高値圏の推移を続けた。
そのため、昨夜から今朝までの米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の高値でドルの安値の145円15銭前後から円の安値でドルの高値の145円83銭前後の値動きで、今朝7時前頃のニューヨーク終値は145円76銭付近と前営業日同時刻の前ニューヨーク終値の144円48銭付近と比べ約1円28銭の大幅な円安ドル高をつけていた。
今朝9時頃から始まった今日の日本の東京外国為替市場では、早朝のアジア・オセアニア市場で今夜の米国重要インフレ指標の発表予定を控えた利益確定売りや持ち高調整の抵抗の値動きがあったため、ドル円は一時145円72〜78銭付近の始値になったが、日本市場では今朝までの大幅な円安ドル高の進行を受けた日系輸出企業などが、手持ちのドルを高値で売り円を買う値動きが入り始めたため、今朝9時頃の一時145円78銭付近が今日の日本市場の円の安値でドルの高値となり、対ドルの円相場が反発して今朝までの下げ幅を縮め始めた。
また、前述の欧州中央銀行 (ECB) 理事会高官の発言を受けて、早期の欧州利下げ予想が後退したことが原因となり、午前9時前のアジア・オセアニア市場では、一時160円付近の昨年12月上旬以来の円安ユーロ高になっていたが、同じく高値後のユーロの利益確定売りや円の買い戻しなどでも円相場が上昇した外貨影響の波及や、日本市場でも今夜の最新米国重要経済指標の米国消費者物価指数 (CPI) の発表イベントに向けたイベントリスクのドルの買い控えなどもあり、対ドルの円相場は今日の日本市場の昼の13時39分頃には一時145円28銭付近の今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
ただし、午後14時には日本の最新経済指標の昨年11月の景気先行指数 (CI) 速報値が前回の108.9と市場予想の107.9を下回る107.7で、11月景気一致指数 (CI)速報値も前回の115.9に対し市場予想通りの114.5であったことでは、市場高値後の円には利益確定売りが続いた。
また、今日の東京株式市場では日経平均株価が続伸し、バブル崩壊後の高値記録を更新していたことを受けては、日米株価上昇時のリスク選好の低リスク通貨の円売りのトレンドも継続し、午後15時台に今日の日経平均株価が3万5049円86銭の終値で前日比608円14銭高の大幅高になったため、午後15時台に対ドルの円相場は145円台中盤付近に反落した。
今日は日銀が今月1月の地域経済報告のさくらレポートを発表し、海外の経済回復ペースの鈍化やインフレの影響があるものの、日本全国地域では景気は地域別に持ち直し、緩やかに回復、着実に回復と、全体的な回復が示唆されたことも、リスク選好傾向を高めていた。
午後からの欧州英国市場の参入では、今夜の米国消費者物価指数 (CPI) 発表前のイベントリスクによる安全資産の米国債会の影響もあり、米国長期金利が再低下した時には持ち高調整のドル売りの抵抗も混ざったが、日米金利差予想ではドルが下げ渋る形となった。
そのため、今夜17時の今日の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は145円41~42銭付近で、昨夜17時の144円92~93銭付近の前東京終値比では約49銭の円安ドル高になった。
今夜この後には、最新米国経済指標発表や米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の発言予定と米国債入札予定などがあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜22時30分に世界的な注目度の最新米国重要経済指標の 先月12月の米国消費者物価指数 (CPI) と、同時刻に前週分の米国新規失業保険申請件数と米国失業保険継続受給者数が発表されるイベント時間があり、続いて26時40分頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国リッチモンド連銀のバーキン総裁の発言予定と、27時に米国30年債入札予定、28時には先月 12月の米国月次財政収支なども発表される予定があり、イベント時の値動きには注意が必要である。
一方、今日の欧州ユーロは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のユーロ円相場の終値は159円62〜64銭付近と、昨夜17時の158円34〜39銭付近の前東京終値比で約1円28銭の大幅な円安ユーロ高であった。
主な要因は、前述の通り、早期の欧州利下げ予想が後退した一方で、日銀の早期の修正予想も後退していたため、日欧金利差による円売りユーロ買いで今朝までに大幅な円安ユーロ高が進行しており、今日の日本市場では円相場が下げ幅を縮める動きを見せたものの、円安ドル高などの影響あり、円相場の下げ幅の縮小幅は限られていた。
また、今日も日経平均株価がバブル崩壊後の高値を更新し、大幅高で大引けしたことで、リスクオン市場では、主要通貨に対して低リスク通貨の円が売られやすくなっていた。
ユーロドルは、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値は1.0977〜1.0979ドル付近で、昨夜17時の1.0927〜1.0929ドル付近の前東京終値比で約0.50セントのユーロ高ドル安であった。
主な要因は、先述の欧州中央銀行 (ECB) 理事会のシュナーベル専務理事の発言を受けて、欧州ユーロがドルに対しても買い戻された影響や、今夜この後の米国消費者物価指数 (CPI) 発表を控えた結果が分かるまでのイベントリスクによるドルの買い控えと、欧州長期金利上昇時のユーロ買いと米国長期金利低下時のドル売りの影響などが観測されていた。
英国ポンドは、今夜17時の今日の東京外国為替市場のポンド円相場の終値は185円53〜59銭付近で、昨夜17時の184円5〜11銭付近の前東京終値比で約1円48銭の大幅な円安ポンド高であった。
主な要因は、日米株高によるリスクオン市場で低リスク通貨の円が売られやすく、日本の実質賃金鈍化により賃金上昇を伴うインフレ目標を掲げる日銀の早期の大規模緩和金融政策の修正予想がさらに後退した一方で、英国インフレ率を重視した英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE) のベイリー総裁の発言を受けて、今年早期の英国利下げ予想も後退したため、日英金利差予想が為替相場に影響を及ぼしていた。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2024年1月11日の日本時間(JST)20時34分(チャート画像の時間帯は、日本から時差で9時間遅れの英国ロンドン外国為替市場の冬時間 (GMT / JST-9) の11時34分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 20:34の為替レート | 昨日の日本時間JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 145.38 〜 145.40 | +0.46 (円安) |
ユーロ/円 | 159.64 〜 159.66 | +1.30 (円安) |
ユーロ/ドル | 1.0978 〜 1.0980 | +0.0051 (ドル安) |
英ポンド/円 | 185.61 〜 185.67 | +1.56 (円安) |
スイスフラン/円 | 170.88 〜 170.94 | +0.84 (円安) |
豪ドル/円 | 97.58 〜 97.62 | +0.48 (円安) |
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