FXニュース:地政学リスク回避が再燃
東西FXニュース – 2024年11月21日
文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
今日2024年11月21日木曜日の日本の東京外国為替市場の今朝9時頃から今夜17時頃までの対ドル円相場の為替レートの値動きは、円の安値でドルの高値の155円30銭付近から、円の安値でドルの高値の154円55銭付近の値幅約75銭で、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は154円96〜97銭付近と、前営業日同時刻にあたる昨日17時の155円65〜67銭付近の前東京終値比では約69銭の円高ドル安であった。
今日の為替相場の値動きの主な要因と時間に沿った世界外国為替証拠金取引 (FX / Foreign Exchange) のマーケット・トレンドの動向と分析はまず、昨日の日本市場終了後の昨夜21時台の英国ロンドン外国為替市場では、米国政治要因のインフレ圧などによる金利先高感や米国利下げペースの鈍化予想値が上昇する中で、時間外の米国債券取引で米国10年債の利回りが指標となる米国長期金利が再上昇を続け、昨夜21時20分頃の一時4.434%付近に向けて4.43%台に乗せ始めていたため、債券利回りを受けた金利差トレードの日米金利差拡大時の低金利通貨の円売りと高金利通貨のドル買いの影響では、ドルは円相場で昨夜21時1〜3分頃の数分間にかけて一時155円88銭付近の日通し高値を記録していた。
また、昨日の夕方に発表された最新英国インフレ指標の10月の英国消費者物価指数 (CPI / Consumer Price Index) の上振れを受けた英国中央銀行のイングランド銀行 (BoE / Bank of England) の英国利下げペース鈍化予想の高まりにより、昨夜21時15分頃には英国10年債の利回りが指標となる英国長期金利も一時4.553%付近に連れて上昇しており、日英金利差拡大による円安ポンド高の外貨影響も対ドル円相場に波及していた。
欧州英国市場の後半にあたる昨夜22時頃から時差で始まった米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は一時155円68銭付近の始値であったが、先述の時間外の米国長期金利の上昇が米国ニューヨーク債券市場でも続き、昨夜23時頃には一時4.441%付近と更なる高利回りになった債券利回りの日米金利差拡大の円売りドル買いの影響では、昨夜23時20分頃にドルは円相場で一時155円84銭付近と米国市場の円の安値でドルの高値を記録した。
しかし、同時進行中の欧州市場と世界最大規模の英国ロンドン外国為替市場では、前日にも英国と地理的・経済的に近い欧州連合 (EU / European Union) と隣接する地域のあるウクライナが米国製長距離地対地ミサイルATACMS (Army Tactical Missile System / エイタクムス) でロシア領内を初攻撃したニュースがあったほか、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が核抑止力の国家政策指針を定めた核ドクトリン改定を承認し、地政学リスク回避が市場で高まった時間があったが、前日の続報ではロシアのセルゲイ・ラブロフ外務相が「ロシアは核戦争を起こさない立場」と発言したことでは地政学リスク回避後の持ち高調整が入ったが、昨夜23時半頃の世界ニュースでは、ウクライナが英国製長距離巡航ミサイルStorm Shadow (ストーム・シャドウ / 英国とフランスの共同開発のためSCALP-EGとも呼ばれる) を使用してロシアのロシア軍司令室を空爆したという話題があり、市場では再びウクライナ情勢への警戒感による地政学リスク回避が再燃した。
昨夜23時半過ぎには、ウクライナ情勢警戒の地政学リスク回避のリスクオフ (Risk-off) で世界的な安全資産の米国債が買われて米国債券価格上昇に伴う利回り低下が起き、米国長期金利が急落を始めたため、債券利回りを受けた日米金利差縮小時の円買いドル売りに加えて、低リスク通貨の円買いも入った影響などから、深夜24時21分頃にはドルは円相場で一時155円5銭付近に反落し、昨夜の米国市場の円の高値でドルの安値を記録した。
米国ニューヨーク債券市場では、地政学リスク回避の安全資産の国債買いの影響に加えて、午前1時頃から次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Reserve Board) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) のリサ・クック理事の発言の影響もあり、「米国インフレは引き続き緩和しており、米国利下げ継続が適切となる可能性が高い」とハト派寄りの発言があったことも米国長期金利低下を促し、午前1時40分頃には米国長期金利は一時4.393%付近にまで低下したが、リサ・クック理事の発言には続きがあり、「米国利下げの規模とタイミングは、経済指標次第で、事前には決まっていない」と、米国利下げ時期に関しては慎重なデータ次第の中道的な発言もしたことや、「米国のインフレ鎮静化が停滞し、米国雇用市場が依然として堅調であれば、米国利下げを一時停止するシナリオも考えられる」とタカ派寄りの発言もあったことでは、欧州ユーロに対しては世界的な流動性の高さから安全資産でもありドルも買われた影響があり、ドルは円相場で反発を始めていた。
午前2時15分頃からは、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) の高官達の中でもタカ派代表として知られているミシェル・ボウマン理事の発言も始まり、「米国インフレ抑制の進展は停滞している様子」であることを指摘し、「更なる米国利下げには、慎重なアプローチを取るべき」と、米国利下げに慎重なタカ派姿勢を続けていたことでもドルの買い戻しが入った。
午前3時には米国ニューヨーク債券市場で米国20年債の入札があり、時差先行の欧州英国市場が終了後であったことから、米国市場では先週のトランプ・トレードの燻りなどもあり低調な国債入札結果となった影響では、他の年度の米国債にも売りが入り、欧州英国市場からの地政学リスク回避で反落していた米国長期金利が反発し、午前5時頃の一時4.421%付近に向けて4.4%台の高利回りに戻した推移を再開したことでは、ドルも円相場で反発し、午前5時2分頃には一時155円54銭付近と155円台後半に戻していた。
一方、米国ニューヨーク株式市場では、前日には続落していた米国ダウ工業株30種平均 (Dow Jones Industrial Average) が反発上昇して前日比で大幅高の終値に向け、米国S&P 500種株価指数 (Standard and Poor’s 500 index) も小幅高になったが、世界規模のハイテク企業比率が高い米国ナズダック総合株価指数 (NASDAQ Composite) は反落したまま小幅安で株引けした影響では、米国長期金利の反発に伴い低リスク通貨の円には利益確定や持ち高調整が入っていたものの、米国エヌビディア (NVIDIA) 社の決算報告前の時間で、一部株価の地政学リスク回避やイベントリスクなどの影響もあり、リスク回避のリスクオフによる低リスク通貨の円買いの影響はやや残っていた。
なお、米国株式市場の株引け後の午前6時20分頃から、世界的な人工知能 (AI / Artificial Intelligence) 半導体大手の米国エヌビディア (NVIDIA) 社の決算報告のイベントがあり、8~10月期の売上高は市場予想を上回る過去最高の351億ドル (約5.4兆円) を記録したが、需要に対する供給の問題などがあり、見通しに関しては以前の様な市場予想を大きく上方乖離した強い見通しではなかったことなどから、株主視点ではやや物足りなさが残った。
しかし、米国ニューヨーク債券市場では、今朝のニューヨーク終値時点の米国長期金利は4.406%付近で、前日比では+0.008と上昇していたことでは、この時間には日米金利差拡大による円売りドル買いの影響の方が顕著であった。
このため、昨夜22時頃から今朝7時頃までの米国冬時間の米国ニューヨーク外国為替市場の対ドル円相場は、円の安値でドルの高値の155円84銭付近から、円の高値でドルの安値の155円5銭付近の値幅約79銭で、今朝7時頃のドル円のニューヨーク終値は155円44銭付近と、前営業日同時刻の前ニューヨーク終値の154円66銭付近と比べて約79銭の円安ドル高をつけていた。
今日の早朝のアジア・オセアニア市場に続き、今朝9時頃から始まった今日の東京外国為替市場の対ドル円相場は一時155円27銭付近の始値で、この今朝9時0分の1分間の値動きの中で瞬時に記録した一時155円30銭付近が今日の日本市場の円の安値でドルの高値となり、今日の日本市場では今朝の東京株式市場では地政学リスク回避のリスクオフの燻りなどもあり、今日の日経平均株価が朝に急落しながら始まったため、日本株価下落時のリスク回避のリスクオフで国内第一安全資産の低リスク通貨の円買い需要が高まり、対ドルの円相場が上昇した。
また、今日の日本市場では、日本の輸出企業による円買い観測も為替相場に影響を及ぼし、昼の12時2分頃には一時154円86銭付近と、対ドルの円相場が一時154円台に買われていた。
午後14時10分頃から日本銀行 (日銀 / BoJ / Bank of Japan) の植田和男総裁の発言があり、講演で「トランプ次期米国政権の政策が発表された段階で、状況を注視する」と発言しており、「12月会合までに多くのデータが出る。12月会合の結果を予測するのは不可能」と、12月の追加利上げの可能性を否定しなかったことでも、来年1月の米国第2次トランプ政権発足までの完全様子見ではなく、「政策が発表された段階」でもデータ次第では追加利上げの可能性が排除されていないことでは、ややタカ派寄りの発言として円が買われた時間もあった。
午後15時台には、終盤の日経平均株価が今朝の急落後に大幅安になったまま推移を続ける中で、日本株価下落時のリスク回避のリスクオフによる低リスク通貨の円買い要因があったのと同時に、次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制度理事会 (FRB) 高官の米国ニューヨーク連邦準備銀行のジョン・ウィリアムズ総裁が、米国の有名投資週刊誌BARRON’S (バロンズ) のインタビューで、「米国金利は更に低下する可能性がある」ことや、「米国のディスインフレは続くだろう」などのハト派寄りの発言をしていたことが話題となり、先ほどの日銀の追加利上げ予想の上昇に対し、米国利下げ予想が再び意識された日米金利差縮小予想の影響などでも円買いの勢いが増したことで、午後15時16分頃には、対ドルの円相場で一時154円55銭付近と今日の日本市場の円の高値でドルの安値を記録した。
午後15時30分頃には今日の日経平均株価は3万8026円17銭の終値をつけ、前日比326円17銭安の大幅安で大引けしたが、終盤には一時の大幅な下げ幅をやや縮めていたことでは、夕方からの欧州市場の参入では、世界的に流動性の高い安全資産でもあるドルの買い戻しも一時先行した。
しかし、英国冬時間の時差になり今夜17時頃の東京終値の頃から参入を始めた英国ロンドン外国為替市場では、ウクライナ情勢の続報で今日はロシア軍が大陸間弾道ミサイルICBM (Inter-Continental Ballistic Missile) を発射したとウクライナ軍が発表したニュース報道を受けた地政学リスク回避の再燃があり、再び低リスク通貨の円買いが強まり、円相場は欧州ユーロや英国ポンドを始めとする主要通貨に対して再び上昇し、今夜18時21分頃の英国市場では対ドルの円相場は一時154円8銭付近に向けるのであるが、その前の今夜17時に今日の東京終値をつけた。
そのため、今夜17時の東京外国為替市場の対ドル円相場の終値は154円96〜97銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の155円65〜67銭付近の前東京終値比で約69銭の円高ドル安になった。
なお、今夜20時台の米国政策金利のフェデラル・ファンド (FF / Federal Funds) レートの市場予想値を算出する米国シカゴ・マーカンタイル取引所 (CME / Chicago Mercantile Exchange) グループのフェドウオッチ (FedWatch) ツールでは、来月12月17〜18日に開催が予定されている次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC / Federal Reserve Board) における米国連邦準備制度理事会 (FRB / Federal Reserve Board) の米国利下げ幅の市場予想値は、0.25%の米国小幅利下げ予想値が一時55.5%付近で推移しており、一方で次回の米国金利据え置き予想値は一時44.5%付近であることでは、ウクライナ情勢を受けた地政学リスク回避による低リスク通貨の円買い後にはドルの買い戻しも入っている。
今夜この後の米国市場では、最新米国経済指標の発表予定と次回の米国連邦公開市場委員会 (FOMC) の投票権を持つ米国連邦準備制理事会 (FRB) の高官の発言予定などがあり、日本時間の経済指標カレンダーのスケジュールは、今夜22時30分に11月の米国フィラデルフィア連銀製造業景気指数と前週分の米国新規失業保険申請件数と前週分の米国失業保険継続受給者数が同時発表され、今夜22時45分頃からと26時30分頃から次回のFOMC投票権を持つFRB高官の米国クリーブランド連邦準備銀行のベス・ハマック総裁の発言予定と、深夜24時に10月の米国景気先行指標総合指数と10月の米国中古住宅販売件数などが発表される予定である。
また、債券や株式とコモディティなどの市場影響や、世界の政治要因やウクライナや中東などを含めた世界情勢ニュースの為替相場への影響などにも引き続き注意が必要である。
一方、欧州ユーロは、今夜17時の東京外国為替市場の今日のユーロ円相場の終値は163円27〜29銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の164円66〜67銭付近と比べると約1円39銭の大幅な円高ユーロ安であった。
主な要因は、欧州ユーロ圏と隣接する地域があるウクライナ情勢の激化を受けた地政学リスク回避による欧州ユーロ売りで、低リスク通貨の円が買われた影響があったほか、世界的に流動性が高い安全資産でもあるドルも買われた影響が欧州ユーロ安に繋がった。
このため、ユーロドルも、今夜17時の東京外国為替市場の終値は1.0534〜1.0536ドル付近で、前営業日同時刻にあたる昨夜17時の1.0577〜1.0579付近と比べると約0.43セントのユーロ安ドル高となった。
英国ポンドも、今夜17時の今日の東京外国為替市場のポンド円相場の終値は195円99銭〜196円5銭付近で、前営業日同時刻にあたる昨日の夜17時の197円60〜66銭付近と比べると約1円61銭の大幅な円高ポンド安であった。
主な要因は、欧州と地理的・経済的に近い英国ポンドも欧州ユーロ同様にウクライナ情勢激化による」地政学リスク回避の影響を受けており、昨夜には昨年5月の英国議会でウクライナへの支援提供を決めていた英国製ストーム・シャドウがロシア攻撃に初めて使われた関与もあり、日経平均株価大幅安のリスク回避のリスクオフや日米金利差縮小予想でも買われていた低リスク通貨の円に対し、大幅な英国ポンド安の東京終値をつけていた。
今日の東西FXニュース執筆終了前の2024年11月21日の日本時間(JST)21時5分(チャート画像の時間帯は、10月最終日曜日に英国夏時間が終了し、来年3月最終日曜日まで日本から時差9時間遅れの英国冬時間の標準時間 (GMT / Greenwich Mean Time) になった英国ロンドン外国為替市場の英国冬時間 (GMT / JST-9) の12時5分頃) の人気のクロス円を中心とした東京外為前営業日比の為替レートは下表の通りである。なお、米国市場も11月の第1日曜日から来年3月の第2日曜日は米国冬時間 (EST / Eastern Standard Time / GMT-5 / JST -14) にあたるため、2024年11月3日に米国サマータイム (EDT / Eastern Daylight Time / GMT-4 / JST-13) の米国夏時間も終了し、現在の世界市場では欧州市場と英国市場と共に米国市場も冬時間で日本との標準時差となっている。
通貨ペア | JST 21:05の為替レート | 日本市場前営業日JST 17:00の前東京終値比 |
ドル/円 | 154.56 〜 154.58 | −1.09 (円高) |
ユーロ/円 | 162.61 〜 162.63 | −2.05 (円高) |
ユーロ/ドル | 1.0520 〜 1.0521 | −0.0057 (ドル高) |
英ポンド/円 | 195.34 〜 195.40 | −2.26 (円高) |
スイスフラン/円 | 174.87 〜 174.93 | −1.09 (円高) |
豪ドル/円 | 100.77 〜 100.81 | −0.72 (円高) |
注意:
本ウェブサイトに記載されている全ての情報またリンク先を含めた情報は、情報提供を目的のみとしており、取引投資決定、及びその他の利用目的のために作成されたものではありません。取引投資種、外国為替取引業者の選択、売買価格投資等の全ての最終決定については、利用者ご自身のご判断において行われるようお願い致します。当社は、当サイトに掲載した情報によって万一閲覧者が被った直接・間接的に生じた損失に関して一切責任を負わないものとします。また、当社および当社に情報を提供している第三者は一切責任を負うものではございませんので ご了承ください。万が一、当サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社は一切責任を負いません。当社はこのウェブサイトの掲載内容を予告なしに変更または廃止することがございますので、あらかじめご了承おきください。