文/八木 – 東西FXリサーチチーム
主な点:
- 日本銀行が今日発表の4月国内企業物価が1980年以来の10%上昇を記録
- 上海都市閉鎖中の中国景気悪化で世界景気リスク回避の低リスク円買いも
- 夕方のビルロワドガロー仏中銀総裁発言でユーロ安牽制の買い戻しが
今日2022年5月16日の月曜日の東京外国為替市場のF Xの円相場の為替レートは、9時から17時までの東京外為取引時間の円の安値が129円67銭前後から高値128円70銭前後の値動き幅97銭程で、今夜17時の東京市場終値は129円31〜32銭で、前営業日比で51銭の円安ドル高であった。
原因は、今日も朝と夕方に、米長期金利上昇や日本銀行の金利抑制の大規模緩和の金融政策継続による日米金利差拡大予想と、長引く円安と物価上昇で輸入企業の実需でのドル需要などの影響で、円売りとドル買いが優勢であったことが大きい。
日本銀行が今朝発表した4月の企業物価指数(速報値)は113.5で、前年同月比10.0%もの上昇で、第二次石油危機後に10.4%を記録した1980年末以来の二桁の企業物価上昇率を記録した。1年2ヶ月連続で前年の水準を上回っており、ロシアのウクライナ侵攻による原油資源高や、資源国の中国などでのコロナ減産での物価高や、長期化する円安による輸入コスト増加などで、石油や資源を中心に幅広い品目の企業物価が上昇していた。
今朝は10時の仲値決済の頃には、米長期金利も2.9%を超えて上昇しており、投資系の日米金利差拡大のドル買いと共に、先述の様に企業の輸入実需のドル買いがあり、10時過ぎには一時は今日の円相場の安値の129円67銭付近まで円が売られた。
しかし、直後の11時前に速報で発表された最新の中国の景気経済指標の4月の工業生産高が悪化しており、市場予想に反しての減少で世界景気の先行き懸念のリスク回避姿勢が強まり、低リスク通貨の円が大きく買われて、11時過ぎには一時128円70銭付近の今日の円の高値にまで急反発した。
中国の上海がコロナ流行で現在も都市封鎖のロックダウン中で、来月6月の解除方針が今日発表されたものの、今日発表のあった中国景気指標はいずれも悪化しており、それが少なくとも来月まで続くことから世界景気への影響が懸念され、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ率加速への期待値が一時減退し、今日の午後に米長期金利上昇が一休止した時には、ドルに続く安全資産の低リスク通貨の円が買われていた。
今日の午後には日本銀行(日銀)の黒田東彦総裁が「為替はファンダメンタルズを反映し、安定推移が重要で、為替の過度の変動は望ましくない」と発言し、一時は128円80銭台まで円が買われた一時的な円安是正方向への値動きもあった。しかし、その後に「(日銀の金利抑制の)金融緩和は粘り強く継続」とも発言したことで、日米金利差拡大予想での円安への歯止めにはならずに、夕方16時頃には欧州市場も参入し始めて、米10年債の利回りが2.92%台に再上昇したことで、再び円が売られて129円35銭付近までドルが買われて、その流れのまま17時に今夜の東京終値を迎えた。
ユーロも、16時頃から時差で朝の欧州英国市場が参入したことで、クロス円で買い戻しが優勢となり、対円のユーロ円は一時134円70円付近に買い戻され、今日の東京終値17時にも134円58~61銭で、前営業日比44銭円安ユーロ高であった。ユーロは安全資産の対ドルでは17時には1.0407~09ドルで、前営業日比で0.07セントのドル高ユーロ安だった。しかし、その後の欧州市場では18時前から僅差でドル安ユーロ高のレンジにも入っている。
原因は、ロシアのウクライナ侵攻を受け、以前は伝統的にロシアと西欧の中立政策を取ってきたロシア隣接地域がある北欧の欧州ユーロ圏のフィンランドと近隣国のスウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)への正式な加入申請を先週より進めていたことで、先週末にロシアのプーチンから「中立政策の放棄は誤っている」と批判があり、地政学的リスクの高まりから、先週末にユーロリスク売りの安全資産のドル買いが大きく進んでおり、先週末のユーロはドルに対して記録的な安値の1.03台に達していた影響が残っており、その後に利益確定のドル売りや円からのユーロの買い戻しが今日起きていたが、東京終値時点では円に比べるとドルに対してのそれまでのユーロの下げ幅が大きかった。
とはいえ、今日の午後夕方から時差で朝の欧州英国市場では、月曜の朝で現地通貨の実需もあり、余剰に買われていたドルや円などの外貨からユーロが買い戻されたほか、今日は欧州ユーロ圏で欧州中央銀行制度参加のフランス中央銀行のビルロワドガロー総裁が、パリの今朝の講演で、「欧州中央銀行(ECB)は為替レートを注視しており、弱過ぎるユーロはECBの物価安定のゴールへの抵抗となる」とユーロ安牽制の発言をしており、「ECBは、少なくとも中立金利に向けた動きをとるべき」等と発言し、欧州中央銀行の利上げ期待からユーロを買い戻す動きが今夜はあった。
今夜その後の18時には、欧州の3月貿易収支が発表され、季調済の前回が−94億ユーロ(修正後−113億ユーロ)で予想が−178億ユーロだったことに対し、結果は−176億ユーロで、予想ほどの悪化ではなかったが、やはり前回よりも大きく悪化していたので、その18時頃をピークに、ユーロの買い戻しはやや弱まったものの、18時頃には円に対してもドルに対しても前日比でユーロ高になっていた。
今日は英ポンドも対円で今日はドルと似た値動きをしており、日英金利差で早朝には買われていたが、11時過ぎには前述の低リスク通貨の円買いの影響で下落し、午後に低迷した後に、夕方16時頃から時差で朝の欧州英国市場が参入したことで現地実需があり、多少のポンドの買い戻しの抵抗もあったが、それまでに英国の記録的インフレによる景気減退懸念で英ポンドが売られた影響が残っており、今夜17時の今日の東京外国為替市場の終値でも158円6〜12銭で、前営業日比で31銭の円高ポンド安であった。
しかし、今夜23時15分には、英国中央銀行のイングランド銀行(BoE)のベイリー総裁の発言が予定されており、ニュースによる今後の値動きには注意が必要である。
また、今夜この後には、米ドルも21時半に米国の5月ニューヨーク連銀製造業景気指数が発表予定で、明日5時にも3月対米証券投資が発表予定なので、値動きに影響が出る可能性がある。
オーストラリアドル対円も、今日の中国景気悪化の世界景気懸念による低リスク通貨の円買いの影響が及んでおり、今日の17時の東京終値には89円24〜28銭で前日比42銭の円高豪ドル安であった。ただし、明日の朝10時半には、豪準備銀行(中央銀行)の金融政策会合議事要旨が発表予定なので、注意が必要である。
今日の東西FXニュース執筆終了時の2022年5月16日の日本時間(JST)19時14分(英国夏時間(GMT+1)11時14分)付近の、クロス円を中心とした東京外為前日比の為替レートは下表の通りである。
通貨ペア | JST 19:14の為替レート | 東京外国為替市場前日比 |
ドル/円 | 129.28 〜 129.30 | +0.48(円安) |
ユーロ/円 | 134.73 〜 134.74 | +0.59(円安) |
ユーロ/ドル | 1.0419 〜 1.0421 | +0.0005(ドル安) |
英ポンド/円 | 158.24 〜 158.30 | -0.13(円高) |
スイスフラン/円 | 128.62 〜 128.68 | -0.40(円高) |
豪ドル/円 | 89.30 〜 89.34 | -0.36(円高) |
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