文/安藤麻矢 – 東西FXリサーチチーム
7日に行われたメイ首相とユンケル欧州委員長の会談は平行線に終わり、3月下旬に迫るイギリスの欧州離脱への不安はさらに高まる。本会談では離脱協定案に含まれるアイルランドの国境問題への対応についての提案は拒否され 、来週の13日までには英議会に新たな離脱案を示す意向だったメイ首相は苦境に陥っている。合意なき離脱の可能性が残るイギリスの経済は先行き不安から、企業投資も萎縮している。
英イングランド銀行の7日の 四半期のインフレ報告発表では、2019年の英実質国内総生産(GDP)成長率の予測を1.2%と、前回より0.5ポイント引き下げられ、翌年も0.2ポイント下げ1.5%とされた。
一方、金融政策については、政策金利を年0.75%で据え置きに。このまま経済成長率が1.2%に減速すれば、米金融危機後の09年以来の低い伸びとになると懸念されている。前回の18年11月時点では、19年の企業投資を2%増としていたが、今回は2.75%減とマイナス成長へ見直される。20年もつ5%増から2.75%増に後退させている。投資が劇的に減少するとの見方を示したことから、ポンドは一時0.6%値下がりした。
ポンド/ドルの予測の一部として1.3020のレベルをテストすることが期待された中、7日のポンドは対ドルでは1.2956で取引され、同日ニューヨーク時間午後4時36分 にはポンドは対ドルで0.1%上昇した。この通貨ペアの下落と、下降トレンドがさらに発展するかどうかは 1.2780のレベルの近くで見られると言われている。
ソシエテ・ジェネラルの外国為替戦略のグローバルヘッド、キット・ジャックス氏によるとポンド は正しいレベルで推移していると言い、現在の価格はブレクジット問題を適切に反映しているとも述べている。加えて長期的に見て、もし仮にブレクジットが取り消しになった場合にはポンドは 1.50ドルにまで急騰することもあり得ると語っている。
ロンドンを本拠地とするヨーロッパの為替ストラテジスト、ジョーダン・ロチェスター氏は 、ユーロに対するユーロへのトレーダーのコミットメント、そして反対する英国議会の過半数によってポンドはわずかなドル安となっているとメディアに語っている。同氏は、ブレクジット問題はもはやリスクではなく、時間の経過や第50条の延長がポンドに影響すると見ている。
メイ氏とユンケル氏は今後も英議会から大きな支持を得られるよう打開策を見つけるために協議を続けるが、具体案は見えていない。両氏が出した共同声明では「2月末まで」に再会談すると記されているが、ブレクジットは目前に迫っている。