文/安藤麻矢 – 東西FXリサーチチーム
イギリス政府内の不和がポンド価格を揺るがしている。 結果的に今世紀初頭以来の現職政権への反対票が集まった1月15日のブレクジット協定案。SEBのFXストレテジスト、リチャード・ファルケンホール氏曰く、2018年の11月にEUが英国に離脱条件を承認した時点で、今回の結果は予想されていた、と語っている。2018年のポンドは7%のスランプとなり、投票の前後は対ドルで約1%の上下が見られた。予測通りに政治リスクが スターリング価格を変動させた。
ポンドは主要10通貨全てに対して上昇し、ドル指数は一時0.2%の上昇となったが、中国が打ち出したより大規模な減税方針や、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁のハト派的発言からリスク選好の動きが戻り、ドルは上げ幅を縮小している。
採決の翌日、こちらもあらかじめ想定されていたメイ首相への不信任投票だが、メイ首相はギリギリ続投の機会を得たことにより好感がたかまり、16日のニューヨーク外国為替市場ではポンドの小幅高が報告されている。
しかしながら、いずれにしろポンドの行く末はわからない。メイ氏の続投から、格付け会社のフィッチは離脱案の政府の敗北は英国の欧州連合(EU)離脱を不鮮明にしたことや、短期的な政治混乱が不透明感を強めると警告している。英国経済が1990年代初期のような景気後退に陥る可能性があるとも言っている。
メジャー保守政権下に起こった戦後最大の不況で大量の失業者が生まれた当時の経済低迷だが、1997年にトニー・ブレア氏が 政権の舵取りを行ったことで15年連続の経済成長を遂げてきたイギリス。しかし、今回のEU離脱問題はイギリスにも欧州にも大きな挑戦を投げかける。貿易関税問題、移民労働者市場、国民のセンチメントなど潜在的リスクは様々だ。
ハードブレクジットへの可能性は、JPモルガンのダイモンCEOは低いとしているとコメントしているが、英国中央銀行のカーニー総裁も同様に下院採決後の金融市場の反応をみても3月29日に英国が合意ない離脱に陥る可能性が少ないという見方をしている。
1月16日のニューヨーク時間午後4時53分、 ポンドはドルに対し0.1%高の1ポンド=1.2877ドルとなった。17日、日本時間午後4時のポンドの対ドル価格は1.2838ドル。
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