文/安藤麻矢 – 東西FXリサーチチーム
英政府は1月15日の今晩7時、日本時間で 16日午前4時に英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に関する協定案への採決を開始する。協定案の否決という見方もあった中、英政府は否定している。メイ首相はからメルケル氏の支援の最終的な申し出から、最終的にはブレクジットは成功するという新たな希望を与えられていると報道されている。協定が打ち切られたらEUが追加譲歩をすることも可能であることをメルケル氏は示唆している。
イギリスの経済が緊張感に包まれ不安定な中、この2年間ではポンド価格は米ドル及び他通貨に対して厳しい状態にいた。もし、この採決にて協定案が否決されたら英ポンドはどうなるのか?それは、「激しい下落」であり、既に多くのアナリストが予想している通り。
2016年の6月から休暇や輸入品がさらに値上がりしているにもかかわらず、イギリスの輸出額は安価な物となっていた。自動車メーカーなどの輸出業社は自社が輸入社となり原油や銅などの原材料を購入してきた。また、イギリス人でありながらも海外に住む人々にとっては、ポンドの下落により受け取る年金額が低くなるという影響が出ていた。
近年、トレーダーたちは経済データよりもむしろ政治に注目し、それは貿易の早さや価格の目まぐるしい変化に目を向けていたという意味になる。それがトレーダーが言うところのボラティリティーだ。
政治的不安はネガティブ材料であるなら、最悪のシナリオとしてはハードブレクジット、つまりイギリスによる強硬的なEU離脱になる可能性がある。そうなった場合、イギリスは商品の約40%をEUに輸出しているため、EU圏内での無関税貿易という特権を失い、多額の関税の支払いを行わなくてはならず、国内経済に大きく影響してくる。この点からもハードブレクジットへの可能性は高くないと見られている。
仮に今晩の結果が否決となった場合は、離脱の延期が求められると見られ、この場合は企業にとっては今後のビジネス戦略への余裕ができることからポンド価格が押し上げられると予想されている。
アナリストたちは、きつい敗北は今でも不調なポンドの為替レートをさらに押し下げると見ており、マネックスヨーロッパのアナリスト、サイモン・ハーヴィー氏によるとブレクジット協定案が承認されることで、おそらくポンドは米ドルに対して5%くらい値上がりすると語っている。
一方、FXTMのチーフマーケットストラテジスト、フセインサイード氏はメディアに法案が却下されると予想しているが、このことがポンドに影響を与える最も重要な要素とは見ていないとコメントしている。自信なき投票、EU条約第50条の発動による最大2年間の交渉期間の延長、2度目の国民投票など、イギリスにはその他様々なボラティリティーの潜在的要素があり、これら全体を考えると、投資家はポンドの様子を伺っている状態にある。
数時間後に開始される離脱(ブレグジット)に関する協定案への採決。ハードと出るか、はたまたソフトか、いずれにしてもポンドのラリーは避けられない。
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